「警戒感」から「どう使う?」へ

新入社員研修が4月から7月ぐらいまで続いていたのですが、

その中でCopilotとGeminiなどのAI研修は今年非常に多かった印象

 

そこで感じるのは、数年前との空気の違い

「AIって危なくないですか」という警戒の質問はめっきり減り、

代わりに「早く活用しなければ」という前のめりのご相談が圧倒的に増えました

 

数字も同じことを示しています。帝国データバンクの2026年3月調査では、

●生成AIを業務で「活用している」企業は34.5%
●活用を禁止している」企業は、わずか0.4%

 

売上高500億円以上の企業を対象にしたPwCの調査でも、2026年春時点の活用・推進度は87%に達しています

 

もう「使うか、使わないか」を議論する段階ではないというのを、肌で実感した年になりました

 

 

使われ方が「チャット」で止まっている?

ところが研修で実態をうかがうと、用途はほぼ一択なんですよね

チャット欄に質問して、答えをもらう。 文書作成やメールの推敲まで。そこから先へ、なかなか進みません。

 

さらに気になるのが、APIや各アプリに標準搭載されているAI機能を「念のため」止めていらっしゃるケースの多さです

しかも理由はコストではなく、セキュリティへの懸念であることがほとんどでした

 

総務省『令和7年版 情報通信白書』でも、日本企業の懸念は1位が「効果的な活用方法がわからない」、2位が「社内情報の漏えい等のセキュリティリスク」。

 

 

慎重さは重要だが…

出典:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」-情報セキュリティ10大脅威 2026 [組織]

誤解のないように申し上げると、慎重になるご判断そのものは正しいと思っています。

IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて選出され、3位に入りました。

守るべきものがある立場なら、ブレーキを踏むのは当然の責任感です。

ただし、問題は「ブレーキを踏む場所」なのです

 

 

無駄に制限すると、リスクは「見えない場所」へ

会社が機能を制限しても、現場は仕事を止められません。行き着く先は個人アカウントです。

ガートナージャパンが2026年6月に発表した調査では、シャドーAIへの有効な対策を取れていない国内企業は7割超。

2026年5月には警視庁のサイバーセキュリティ対策本部も、公式Xで注意を呼びかけました。

 

ただ、希望もあるんです。

Netskopeの日本版レポートによれば、日本ではAI利用者のうち会社管理のAIアプリを使う割合が1年で15%から79%へ上昇し、個人アカウント利用は85%から11%へ急減しました。

 

世界平均を大きく上回る改善です。

つまり、きちんとした環境を用意すれば、人はちゃんとそちらへ移る。

数字がそう語っています。

 

 

チャットは安全?API連携は危険?

ここが核心です。多くの企業が無意識に持っているこの前提は、事実と合っていません。

Microsoftの公式ドキュメントによれば、Copilot Chatのプロンプトと応答はMicrosoft 365のサービス境界内で処理され、Microsoft 365 Copilotと同じセキュリティ・コンプライアンス上の約束が適用されます。基盤モデルの学習にも使われません

Google Workspaceでも、Geminiとのやり取りが組織外に開示されることはなく、既存の保護がそのまま自動適用されます

 

つまり、安全かどうかの本当の分かれ目は「チャット or API」ではなく「法人契約 or 個人・無料枠」

 

Google Cloudの有料サービスではプロンプトや回答が製品改善に使われない一方、Google AI StudioやGemini APIの無料枠では学習に利用されます。

線を引くべきは、機能の種類ではなく、契約と権限設計の側だったのではないでしょうか。

 

 

リスクは「機能制限」ではなく「設計」次第

そう捉え直せた企業から、景色が変わります

チャットの相手だったAIが、業務プロセスそのものに組み込まれていく

見積作成、問い合わせの一次対応、社内ナレッジ検索——人が打ち込む手間ごと、消えていきます

 

そのとき管理すべきは、AI機能のオン・オフではありません

Copilotは各ユーザーがアクセス権を持つデータしか参照しない仕組みですから、

問われるのはアクセス権限の棚卸し、ログの可視化、プロンプトインジェクションへの備え。

つまり設計の話です。

 

必要なのは、「判断できる人」

 

禁止でも、全面解禁でもなく。

「どこまでなら安全か」を自社で判断できる人を、社内に増やすこと。

慎重さを手放さないまま活用を進める道は、結局そこにしかないと、研修の現場で毎回痛感しています