「人事って暇そうだよね」

私が人事時代、他部署の部長から言われた言葉です。

イラっとしたのは言うまでもありませんが、世の人事担当者は皆が思うより何倍も大変で忙しい。

多岐にわたる業務の中でも、特に「採用」は人事担当者にとって重要&優先順位の高い課題です。

逆に「人事評価制度の見直し」など、緊急性が低く、影響範囲の大きい“ヨイショのいる業務”はつい後回しになりがちです。

しかし、「人事評価制度の見直しを怠る企業ほど、採用に悩んでいる」というデータがあることをご存じでしょうか?

今回はなぜ評価制度を見直さない企業ほど、人材確保に苦労するのか?その理由についてお伝えします。

なぜ「人事評価制度」が「採用」に影響を?

画像出典:株式会社リクルート「企業の人材マネジメントに関する調査2023データ集」

ぱっと見で分かりづらいのですが、簡単に表を読み解くと「人事評価制度の見直しができていない企業ほど、採用に苦戦している」というのが見てとれます。

※人事評価制度 = 「評価 + 賃金・報酬 + 昇給・昇進」の制度

では、なぜ直接的に関係のない人事評価制度が、採用に大きな影響を与えるのでしょうか?

そこには主に2つの理由が存在します。

「価値のヒエラルキー」が不明瞭

 

古い評価制度を運用し続けているということは、部署やチームごとの「価値のヒエラルキー」が時代の変化に合っていない or そもそも無いことを意味します。

※ 価値のヒエラルキー:社員が判断や行動を行う上で、何を重視し、優先すべきなのかを決める階層化された価値基準

部署やチーム内で重視されるべき考え方・行動が定まっていない組織は、総じて日々同じ業務を回し続けることに終始し、「革新力」や「変化力」が乏しい傾向にあります。

求職者も少し社員と会話すれば「フワッとしていて活力のない職場」であることを見抜けてしまうため、人材確保が困難になってなっているのです。

人的コストの最適化を行えない

 

「人事評価制度」と評価者の「評価能力」が低い企業は、社員の給与を年齢や入社時期ごとに横並び設定せざるをえません

これは社員の意欲低下を招いているだけでなく、高い給与を設定してハイスペック人材を採用し、職場に新たな刺激を与えることを阻害しています。

「この求職者は、ウチにはオーバースペックなんだよなぁ~」などと言っている企業は要注意。

横並び主義は全体の人的コストを高めてしまうため、限りあるリソースを優秀 or 必要な人材へ「集中」させることができないのです。

【余談】
2024年4月にNECが、初歩的なプログラミングの技能を持つ新卒者へ1,000万円近い給与を提示したことを、かなり珍しい例としてニュースに取り上げられていました。

まとめ

制度の改修は私自身もかなり苦労しましたし、めんどくさいのは痛いほど分かります。

しかし、生産労働人口の大幅低下で、より難しくなることが確定している「採用」業務を優位に進めるだけでなく、

人材定着や離職防止のためにも、「人事評価制度の見直し」を優先的に行うことが重要なのではないでしょうか。